Work in nature

The field of foresters (2011)

人工林の美、林業の現場。

山は水を育み、水は流域を潤し海に注ぎ、人も町も全てを育む。人々は、古くからそんな山とかかわってきた。

日本は、海に囲まれた島国であるが、国土の約7割が緑に覆われた森の国。なのに私たちは、便利な都市生活に幸せを求めて、自然の恵み、地域の個性を記憶の中に置き忘れて、高度経済成長期を暮らしてきた。その代償として地球の危機が叫ばれ、どこから手を付けて良いのか途方に暮れてしまう日々…。

そこに東北の大津波、各地の災害よって、改めてこの国が災害大国であり、幸せな暮らしは、自然への畏敬の念を持って生きる事だと誰もが思い返した。身の丈に合った暮らし、地に足の着いた生き方が、例えば林業を通して見えてくる。

「心・技・体」すべてを兼ね備えなければ、本当の「良い山づくり」はできない。技術が一流でも、小さな山の声が聞こえなければ自然は応えてくれない。僕が山で会った「樵(きこり)」たち。彼らの山づくりが、50年後、100年後の次世代へと引き継がれていく。僕たちは、50年後、100年後の会社の後輩たちのことを考えて仕事をしたことがあるだろうか?

人の手が入ることで木々は健全に育ち、さまざまな生き物たちは住処を分け合う。そして、美しい「人工林」という景観が生まれる。CO2の吸収力が高まり、生物多様性が育まれて、価値ある材となる。愛情たっぷりな森づくりが、地域を、国を、地球を、救う。

熊野古道だから美しいだけでなく、人工林を抜けるから美しい。どれだけの歳月が経っているのだろうか。この山に木を植えた人たちの労働によって、私たちは目や心を癒されている。時空を越えた風景が語りかける。

撮影をしているとき、僕はどこからか「山の精霊」に見守られていたように感じたと、山を持つ林業家に話をすると、日本の山では「生物多様性」だけでなく、「万物多様性」が育まれているのだと教えられた。魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)し、八百万の神がおわす、ここは多神教の国であり「伝承の国」日本なのだと。僕は、地域の大切な資産、守りたい情景、記憶の風景を撮る。